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たくさんのドラマや映画がテレビ・インターネットを通していつでも見られる今、ついつい流し見をしてしまって内容がイマイチ入って来ない…そう…右から左に受け流しちゃう…なんて経験ありませんか?


でもせっかく見るならストーリーをしっかり味わいたいですよね。そんなときは一人きりで、どっぷりと本の世界に浸るなんてどうでしょうか。

浸りに浸るならミステリー小説がお勧めです。

普段の生活では決して味わうことの出来ない非日常のスリリングな出来事にきっと引きこまれていきますよ!

数多くあるミステリー小説の中から、今回は東野圭吾さんの作品をご紹介したいと思います。

東野圭吾さんの作品は、計算された緻密なトリックや整合性などミステリーとしての面白さはもちろんですが、激しく心を揺さぶられる「感情」が込められています。

激しく落ち込んでしまうような切なさから、ついつい笑みがこぼれてしまうような優しさまで、その形は様々です。


喜怒哀楽がいっぱいに詰まったミステリーの世界へ、しばし皆さんをご招待します。



容疑者Xの献身

容疑者Xの献身 (文春文庫)


天才物理学者・湯川学が難事件のトリック解明に挑む人気ミステリーシリーズ「探偵ガリレオ」初の長編小説です。

直木賞受賞作品で、映画化されたことでも話題になりました。


対価のない愛の為に人はどこまで罪を犯せるのか。

自分を犠牲に出来るのか。

堕ちていけるのか。


ささいなきっかけから生まれたあまりに深い愛情と、それに匹敵するほど深く、そして静かな狂気を味わえる作品です。

シリーズものの一作ですが、この小説だけを読んでも十分に楽しめると思います。


しかし、もしガリレオシリーズを一遍でも読んだことのある方は、この作品で見せる湯川の意外な一面にも注目して頂きたいです。

いつもは坦々と物事をこなし、冷静かつ合理的。
警察の捜査協力には応じても、犯人の動機には欠片も興味を示さない。

「あんちゅあ~ん」なんて確実に言わないであろうクールガイ湯川ですが、この作品で彼が容疑者として接することになるのはかつての友人です。


近しい人間を疑わなければならなくなったとき、湯川は事件を解決するためにこのまま動くべきなのか、警察に協力し続けるべきなのかを悩み、葛藤します。


これまでになかった、湯川の”感情に揺り動かされる人間臭さ”を垣間見ることが出来るのです。


新鮮な一面は話に花を添えてくれますし、なにより「ああ、湯川先生も人の子だなぁ」と安心することが出来ます(笑)

そして全編を読み終えたとき、タイトルにある「献身」の意味が分かります。

献身的に尽くす=風邪を引いた人に毎日プリンを買ってってやる、くらいしか思いつかなかった私でも分かりました。

そう、きっと誰でも献身とは何か理解できるはずです…!

個人的には秋の夜長にぴったりな小説だと思います。

切なく、不器用過ぎる「愛」と「人間」に、しんみりしようではありませんか。



白夜行

白夜行 (集英社文庫)


大阪のある廃墟で質屋が殺された。
その一つの事件を皮切りにして、19年にも渡り一組の男女の「白夜を行く」人生を描く、超長編ミステリーです。

本当に超長編です。本ぶ厚いです。


幼い子供だった2人は、廃墟での事件から全く別の道を歩き、交わることはなかったはずでした。

しかし交わるはずのない男と女の人生が交錯するとき、何度も凄惨な事件が起きるのです。


綿密に練られたストーリーなので、読んでいる途中「あ!あそこは伏線だったのか!」と度々気付かされます。


そして話を理解したうえでもう一度読み直してみると、初見では気付けなかった伏線が所狭しと張り巡らされており、喫驚します。

「うぇぇぇぇ!?」と変な声を漏らしたものです。

電車の中などで本を読まれる方は変な人だと思われないように注意しましょう。


さて、この作品の特徴なんですが、罪を重ねていく主人公達2人の「心理描写」がほとんどなされていないという点です。

罪を犯す理由、目的、それらは具体的には説明されていないのです。


そして主人公達が互いに向ける感情も明かされていません。


愛なのか友情なのか、贖罪なのかはたまた同情か。


ミステリー小説では読者へ向けて登場人物の心の声を書いたり、犯人が涙ながらに犯行動機を語ったり…と、罪を犯した理由や内心を描写することがセオリーです。

しかし白夜行にはそれがありません。

本当に生身の人間と接するように、主人公たちの行動や言葉、周りの人間の声から「こうであろう」と推し量るしかないのです。

よく、小説は読む人がいて初めて完成されるなんて言いますが、これほど人によって答えや見え方が変わってくる作品も珍しいんじゃないでしょうか。

私は未だに男の行動理由が愛なのか、贖罪だったのか、女が求めたものは何だったのか、はっきりとした答えが出せていません。

明るく見えても決して日が当たることのない「白夜」の暗闇を行く二人。

皆さんは読後、闇の中にどんな答えを見つけるのでしょうか?楽しみですね。



むかし僕が死んだ家

むかし僕が死んだ家 (講談社文庫)

ある日突然名前が変わったとしたら、それまでの自分は死んでしまうと思いますか?

家族だと思っていた人達が家族ではなかったら?

自分が本当は見知らぬ他人だったとしたら?


幼い頃の記憶がないという元恋人とともに、主人公は彼女の過去を探っていきます。

手掛かりはたった一つ「小さな白い家」。

ここで一度彼女は死んだというのです。


彼女の過去を紐といていく中で、主人公自身も過去を回想し思う「僕もあの日、死んだのだ」と。

そしてこうも思うのです。

誰しもに、昔、自分が死んだ家があるのではないかと。


自分が死んだとはどういうことなのか。

今を生きている自分は何者なのか。


衝撃的なタイトルとテーマが直球で飛び込んできます。
自分とは何か、深く考えさせられるミステリーです。

ちなみに私は「金持ちで聡明な何不自由ない自分」が、生まれて0.2秒ぐらいで死んだんだと思っています。

どこの家に行けば手掛かりが見つかるでしょうか。



放課後


放課後 (講談社文庫)

東野圭吾のデビュー作にして、江戸川乱歩賞を受賞したミステリー小説です。

舞台は女子高。主人公はその高校に勤める教師であり、女の園で起こる殺人事件の真相に迫っていきます。

この作品で注目して頂きたいのは、なんと言っても女子高生たちの「リアル」さです。


私にも女子高生だった頃がありました。そしてこの「放課後」を初めて読んだのもその頃です。

まあ部活に精を出したり、男性教諭を誘ってみたり…それぞれがそれぞれにリア充してやがる作中の彼女たちとかぶる部分は一切ありませんでしたが、一応分類上同じだった時代があるわけです。

そんな読んだ当時女子高生。
現・元女子高生が考えるに。

「放課後」の女子高生たちは、自分達が起こす行動に対してさまざまな主張を繰り広げます。

もちろん全ての主張に共感することはできませんが、それらは共感できないなりに「理解」は出来るものなのです。


女子高生特有の連帯感や激しい思い込み、差別意識。妙な冷静さや、きっかけの分からない激情…それらは元女子高生だった女性だけでなく、彼女らと触れ合う誰もが生活の中で体感したことのあるものだと思います。


言いたいことは分かる。だけど肯定はしてあげられない。


子供でも大人でもない少女たちの狭く、そして残酷な世界を、男性作者とは思えないほど生々しく書きあげているのです。

もしかしたら彼女たちは、次にあなたにその目を向けるかもしれません。

静かな日常の中に潜む狂気。

じんわりと汗が滲んでくるミステリーをどうぞご一読ください。



浪速少年探偵団


新装版 浪花少年探偵団 (講談社文庫)


小学校教師である「しのぶセンセ」と、彼女の教え子である小学生達が様々な事件に挑むミステリー小説です。

大阪が舞台ということもあり、登場するキャラクターは皆明るく、個性的です。

一見は丸顔の美人なのですが、水商売の女性と間違われてしまうほど派手な服装に身を包み、口が達者で喧嘩っ早いしのぶセンセが小学生達に囲まれて、そのうえ彼女に好意を寄せる男性陣までプラスされ、終始ワイワイガヤガヤと賑やかに進んでいきます。

また、登場人物たちのキャラ立ちがはっきりしているためか、場面場面の絵が浮かびやすく、漫画やアニメでも見ているかのような気分になれます。

一話完結のオムニバスということもあり、テンポよくぽんぽんと読み進めていけます。

読み口が非常に軽いので、読書の習慣がなかったり本を読むのが苦手…という方にもお勧めできる一冊です。



私が彼を殺した

私が彼を殺した (講談社文庫)

ドラマ、映画化もされている「加賀恭一郎シリーズ」の一作です。

人気シリーズですので、名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。


さて、この「私が彼を殺した」。最大の特徴は、最後まで犯人が明らかにされないということです。


「どういうこと!?」と思いますよね。
実はこの作品は、読者が犯人を推理する、という趣旨の小説なんです。


結婚を間近に控えた脚本家が毒殺される。
捜査の結果、被害者に毒を盛ることが出来た人物は3人であり、当然彼らが容疑者になります。


しかし難しいのはここから。


実は容疑者は全員、脚本家を殺したのは自分自身だと思い込んでいるんです。
もちろん真犯人は一人だけです。

ストーリーは容疑者三人の視点を順次入れ替えていきながら進みますが、自分が犯人だと思っているだけにどいつもこいつも怪しいのです。


「全員犯人だな、うん」というのが正直な感想です。


実は私は、この作品を普通のミステリー小説だと思って読み始めたんです。

普通に加賀さんが推理するものだと思い込んでおりました。

まあ、多少読み落としがあっても最終的には加賀さんが解決してくれるし~と、
いつも通り自分で考えることを放棄し、しかしワクワクしながら読み進めていたところ…なんと加賀さん、犯人を教えてくれませんでした。

犯人はあなたです。って言って終わりました。


「えええええ!?」となりましたよ。

冒頭に書きました「どういうこと!?」あれ、私の声です。

その失敗談からもう二度と私のような人間を生まないために、今こうしてこれを書いているわけですね、はい。


しかし趣旨を理解して読み始めると、単純に面白いです。

小説としての面白さはもちろんですが、これは証拠になるかな、今の発言はどこかと矛盾してないか?など、自分が作品の世界に入り込んでいるような気分を味わえます


ですがそうそうピシャリと犯人はいい当てられません。
何度読み返しても私には見当をつけることすら無理でした…。

しかし本の後ろの方にはヒントなんかも書かれているので、それを踏まえて再度挑戦してみるのもまた楽しいと思います。

どうしても分からない場合は…私の場合ですが、インターネットに頼りましょう(笑)

解説をして下さってるサイトがたくさんありますよ。

ミステリー小説好きを公言していても、こんな頭の奴もいます。皆さん臆さずミステリーに挑戦していきましょう!





さて、気の趣くままに大好きな作家さんを紹介して参りましたが、一作品でも興味を持っていただけたでしょうか?


たくさんのことを考えたり感じさせてくれる6作品、皆さんが手に取るきっかけになれていれば嬉しいです。





ミステリーの世界って不思議で面白いですね!
現実でも新旧の文化で不思議な世界を楽しむのはいかがですか?
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