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そろそろ読書の秋がやってきますね。


いい具合に涼しい気候の中、読書にふけるのも楽しいものです。





そこでお勧めするのが、東野圭吾さんの代表作「ガリレオ」シリーズの一冊です。

天才物理学者・湯川学が、難事件の様々なトリックやオカルトとも思える事象を解明していく人気シリーズ。2015年現在までに8作品が出版されています。





2007年に福山雅春さん主演でドラマ化され、その後も続編のドラマや劇場版2作品が公開されているので、タイトルを聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。





そんな人気作の中から今回ご紹介するのは、ガリレオシリーズの記念すべき1作目となった「探偵ガリレオ」です。



ガリレオ2



1話1話が独立した全5編からなるオムニバス形式の作品です。





それでは肝心な中身はどういったものでしょうか。

主人公・湯川ってどんな人?




帝都大学物理学助教授(出版後に制度が変わったので正確には准教授)で、同大学の理工学部出身。天才とも言われる物理学者。

頭脳明晰で知識の幅も広いため、級友である草薙刑事によく捜査の協力を頼まれます。





基本的には学者らしく冷静で合理的な性格で、周囲に合わせる、という発想はあまり無いらしく自分のペースは崩しません。

不本意に何かを行ったり、そうせざるを得ない状況に迫られると、そんなときは割と分かりやすく顔に出るようです。





ドラマ版では「理系」という人物像を強調するためか偏屈さに磨きがかかっており、かなりのポーカーフェイスで感情も見えにくく、トリックさえ暴ければ犯人の事情に興味なし…といった人物として描かれていましたが、原作では犯人の犯行動機に耳を傾けるなど、それなりに人間的な部分も描写されています。





話の序盤で事件のトリックに見当をつけていることも多いですが、学者の性質からか実証実験を行ったりトリックを実行出来るだけの条件が揃っていたかを調べるなどして、自分の推論に確実性が認められないとそれを話すのが嫌らしく、意味ありげなことを言って草薙をやきもきさせるなど小悪魔的(!?)な一面もあります。




しかし頻繁に人のあげ足を取るなど少々嫌味な部分もあり、まあその辺りと小悪魔なところで魅力は相殺といったところでしょうか(笑)





大学生時代はバトミントン部で現在も腕前は健在。学内で試合をしている描写もあります。

そのためか、見た目からは線の細い印象を受けても意外と体はガッチリしているとのこと。うーん、素敵ですね!





ちなみに草薙刑事は、湯川の大学の同窓生。

奇妙な事件が起こると大学の湯川の研究室に足を運んでアドバイスを請います。





ガリレオシリーズの主人公は湯川ですが、基本的には草薙が主体で話は進んでいきます。



シャーロックホームズでいういわゆる”ワトソン”役です。文系出身で理数はからっきし。

全体的な読み口は?




前述の通りオムニバスであり、一話は60ページ程度で短めです。




トリックの解明に重点を置いているので、被害者や遺族、犯人の心理描写などは必要最低限になっています。

人物を深く掘り下げたりはしないので、文章は全体的にかなりあっさりしています。





登場人物に感情移入しながら物語の中にがっつり入り込みたい…という方には少々物足りないかもしれません。が、スラスラ読み進めてはいけます。




犯人逮捕の場面などもさらりと書かれていたり、後日談として草薙が語っていることも多く、「え?お前犯人?」と言ってしまうほどほとんど登場シーンがない人物が犯人だったりします(笑)





しかし物理学者が謎解き役であり、作者が「マニアックでいいから書きたい」と言って発表された作品だけあって、トリックはなかなか難しいものです。





湯川の推理や説明に対して、読者の代わりに草薙が「何それ?意味分かんない…」と言ってくれるのが救いでしょうか。

文系の草薙に説明する、という形で、読者にも説明してくれるのでかなり噛み砕いた表現(だと思われる)をしてくれています。





それでもやっぱり完全には分からないのですが…

なんとなく「ああ~、そんな感じ…」と輪郭を掴むくらいは文系でも出来るようです。





文章だけでイメージがしにくい場合は、ドラマ作品を見てみるのもいいかもしれませんね。

映像化されたものを実際に目で見るとやはり分かりやすいものです。





さて「探偵ガリレオ」の概要はこういった感じですが、それでは1つ1つのお話はどんなものでしょうか。

燃える/もえる




ある住宅街の路上で、1人が死亡4人が重軽傷を負う局部的な火災があった。

死傷したのはいずれも20歳前後の少年たち。

少年たちは週末になると火災現場となった路上に集まり、夜中まで騒ぐのが日課のようになっていた。





騒音やゴミの放置など、周辺住民は当然迷惑しているがこのご時世に彼らに注意する人物もいない。

住民たちの鬱憤が溜っていたそのさ中、火災が発生した。

怪我を負った少年たちに話を聞いてみると、彼らは奇妙な証言をする。





“死亡した少年の頭がまず燃え始め、それから周囲に炎が広がった”というのだ。





順序が逆ではないか?と聞き返してみても、少年たちは口をそろえて”頭部が燃えたのが先だ”と主張し言い分を曲げない。





また、現場にポリタンクとガソリンの匂いが残っていたことから、このポリタンクの中身が燃えたものと推測されたが発火の原因は分からないままだった。





そこで草薙刑事は、大学の同窓生である湯川に意見を求めることにする。

始めは「非行を繰り返す少年たちのいる場所で火災があった。理由は簡単だ」と真剣に取り合わない湯川だったが、頭部から先に燃え始めたという証言を聞かせてみると、少し興味を引かれたようで…





迷惑な少年達に罰が下る――そんなような描写で始まるこのお話。

罰にしたって死傷するって重すぎやしないか…という感じもしますが、それがラストに響いて来るんですね。





犯人はある大きな誤算をし、犯行動機も相まって切ない結末が待っています。





念願叶ったはずの犯人は苦悩し続け、心は晴れない。




きっと犯人は悪人ではないはずでした。





悪人ではないはずの誰かが犯してしまった罪、皆さんはその人を「悪」と呼べますか?

転写る/うつる




姪の通う中学校の文化祭を訪れた草薙は、そこで奇妙な展示物を見つける。

「ゾンビのデスマスク」とタイトルがつけられたそれは、石膏で作られた人間の顔だった。




リアルな造形から実際の人の顔で型を取ったものと思われる。

刑事である草薙は直感的にそれが”死人の持つ独特の表情している”と感じた。





しかし中学生が死体から型を取り、そんなのものを作れるはずがないと思い直し展示場を出ようとしたとき、草薙は入れ違いに展示場に入っていく女性2人とすれ違う。





切迫した様子の女性たちを不審に思い目で追うと、2人は一直線にデスマスクの下に向かった。そして片方の女性が呟く「兄さんよ、間違いない」。






女性に話を聞くと、あのデスマスクが行方不明になっている兄にそっくりなのだという。

また、デスマスクを展示した男子中学生はデスマスクの「型」を、偶然ある池で拾ったと証言した。






その証言に基づき「ひょうたん池」を捜索した結果、男性の遺体が発見される。

遺体は腐乱していたが、程なく側頭部が殴られ陥没していること、そして女性の兄であることが判明した。






行方不明だった男性の遺体発見のきっかけが、偶然拾われたデスマスク――

マスコミがオカルトチックに事件を取り上げる中、草薙は湯川のもとへ向かった。

話を聞き終えた湯川に「その池の近くで狩猟は行われているか?」と謎の質問をされながら、2人は遺体発見現場へと足を向ける。






前述のように犯行動機は深くは掘り下げられず、さらりと簡潔に書かれています。

それ故に犯人の浅ましさや身勝手さが際立っているのが印象的です。






死人の顔がマスクになるという何ともオカルトチックな始まり。

もちろん謎は解明されますが、ラストもどこかオカルトチックな余韻があります。






偶然だと言ってしまえばそれまでですが、やはり科学だけでは説明できないものがあるのではないかと思わせてくれる一遍です。

壊死る/くさる




一人の男性が自宅の浴室で死亡していた。

男性は元々心臓が弱く、浴室で心臓発作を起こしたものと思われる。





しかし一点だけ奇妙な点があった。

それは男性の胸にある直径10センチほどの痣だった。






男性の息子の証言によれば、そんな痣は見たことがないという。

また、それは内出血などによる一般的な痣ではなく、瞬間的に細胞が破壊され、その一部分だけが「壊死」している状態だった。






普通ならば”心臓の弱い男性が浴室で心臓発作を起こして亡くなった”という構図に一つの不自然さもない。

しかしその痣があることによって、事故か病死かそれとも他殺か。その判断すら出来ないという状態だった。






医療的なものは専門外か―――

そんなことを思いながらも、草薙はまた湯川のもとを訪ねる。

一通りの事情を説明した後、2人は手掛かりを求め、死亡した男性が執心していたというホステスのいる店へと向かう。






被害者、犯人、共犯者。この回の登場人物、全員ゲスいなぁという印象です。

被害者含め、誰にもあんまり同情出来ないんですね。






最終的に勧善懲悪となるのでなかなかスッキリとします。






犯人が犯人のくせにラストに名言吐きます。名言というか上手いこと言います。


ご注目を!

爆ぜる/はぜる




ある海水浴場で爆発事件が起きる。




突如海面から黄色い火柱が上がり、水しぶきは数十メートルにも及び飛び散った。

その爆発に巻き込まれ1人の女性が死亡している。





自然現象か人為的なものか、人為的ものならば被害女性を狙ったものなのか否か。

爆発の原因が分からず捜査はなかなか進展しないままだった。



――



爆発事件からしばらくが経った頃、ある青年の死体が発見された。

青年は帝都大学の出身であり、何故か帝都大学の駐車場の写真が部屋から発見される。





草薙はその写真を持って湯川のもとを訪ねる。

2年前に理系学科を卒業したという青年を湯川は記憶していなかったが、青年の在籍した研究室の助手に話を取り継いでくれるという。





湯川に紹介された松田という男性は、少し前に被害青年が研究室を訪ねてきたと語った。

青年は大学に斡旋され就職した会社を辞めたそうだが、前向きな様子だったと松田は証言するが…






一見別々に見える事件が、綺麗に結びつく場面は気持ちいいの一言です。

すぱぱぱぱーんと見事に全てが繋がってくれます。





犯行理由は何とも現代的だなぁという印象。

ああ、全部人のせいにして来たんだな…と少し我が身を顧みたくなります。





また、自分の仕事や知識に誇りや自身を持っているからこそ罪を犯してしまうというのは、身勝手なようであり、どこか悲しくもありました。

離脱る/ぬける




あるマンションで女性の他殺体が発見された。

すぐに1人の男性が容疑者として浮上し、事件は解決に向かうと思われた。





しかし容疑者は犯行を否認。

彼は犯行時刻、仕事をサボって車の中で休憩していたという。

サボっているのだから当然、車は人目につかないところに止めていたとも。






車の目撃者は現れずアリバイは立証されなかったが、逮捕に踏み切るだけの証拠もまた集まらなかった。






そんな中で捜査本部に一通の手紙が届けられる。

手紙は奇妙なもので「息子が幽体離脱をし、上空から容疑者の車を目撃した」というものだった。

そして手紙には、目撃した車をスケッチしたという絵が同封されていた。






湯川のもとを訪ねた草薙は、彼に幽体離脱について意見を求める。

あまり真剣に話を聞く気がない様子の湯川は、少年が錯覚を起こしているのだろうという推論を立てるが…






子供嫌いな湯川が子供と対峙するという珍しい話です。

様々な大人の欲に振り回され「目撃者」となり「幽体離脱」をさせられてしまう少年。






彼を苦しめるのは大人ですが、手を差し伸べるのまた大人であるということが、物語に救いを与えてくれます。

湯川の人間らしい不器用な優しさも垣間見れるお話ですので、特にお勧めします。







さてさて、ガリレオシリーズ第一弾「探偵ガリレオ」をご紹介させていただきましたが、お楽しみいただけたでしょうか。

この秋、普段よりちょっとだけ賢くなった気分で、湯川先生と一緒に謎解きの旅に出発してみませんか?






ちなみにドラマでお馴染の「実に面白い」という台詞。

実はこれ、ドラマオリジナルで原作では言ったことないんですね。





うーん、実に面白い!






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