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一番美しい季節、秋。
過ごしやすい時期でもあり、「読書の秋」といわれますね。
「食欲の秋」とも。
せっかくだから、そのどちらの欲求も満たせる、何よりも、面白い本を読みたいと思いませんか。
読書の秋、食欲の秋におすすめの、傑作を紹介します。
傑作なんて、なかなかあるもんじゃないですよね。読まないと損です。
私は、この本はぜったいに歴史に残る、とにらんでいます。
また、いわゆる活字派も、漫画派も大満足のチョイスです。
傑作なんて、なかなかないですよね

皆さんこんにちは、あらゆるジャンルの読書が好きな、たけいさんです。
一ヵ月にどれくらい読むのかな。数十冊は読みますね。
ところで皆さんは活字派ですか?それとも、漫画の方が好きですか。
私はどっちもです。
ひとに感動を与えることが表現者の存在意義ですから、手段がどうかというのは、まったく関係のないことなんですね。
幸い、あなたがどちらでも読むことのできる傑作があります。どうぞ。

そうなんです、いっきに3冊の写真を載せちゃいましたね。
でも、ルーツは同じなんですよ。

順番に説明していきましょう。
『英国一家、日本を食べる』マイケル・ブース著(亜紀書房)と、
『英国一家、ますます日本を食べる』マイケル・ブース著(亜紀書房)です。
後者は厳密に言うと、
『英国一家、日本を食べる』が2013年に刊行された時、
ページ数の関係で掲載できなかった章に、新たな番外編と、
著者から日本の読者の皆さんへのメッセージであるエピローグを加えてまとめたものです。
だから、2冊いっしょに紹介していきますね。
いずれにせよ、ご存じの方も多いですね。
実力派のベストセラーです。
今や、アニメ化もされています。しかもNHK。
海外からも観られます。
後述しますが、漫画化というか、コミック版も出版されています。
まだどれも読んでいない、観ていない方は、それこそ食にあまり興味がなくても、
どんな手段でもいいから、ぜひ、騙されたと思って、いやいや、絶対に!!この世界に触れてみてくださいね。
ええ、そこまで言います。
だって、本当に面白いですよ――。
私のおすすめは、やはり活字というか、始まりであるこの2冊ですかね。
おすすめする理由は、いくつもあります。
まず、この2冊に書かれた情報は、非常に正確である、ということです。
ノンフィクションというジャンルの作品は、「ノンフィクション」なのですから、いくら面白くても、書かれたことが事実と違っていたら意味がありません。
そして本来なら、この題材は著者にとって難しいものだったのではないか、と私は思います。
著者マイケル・ブース氏は、著名なフードジャーナリストです。

パリの有名料理学校ル・コルドン・ブルーにおける1年間の修行、ミシュラン三ツ星レストラン、ジョエル・ロブションの「ラテリエ」での経験をつづった作品がベストセラーになったこともある(それにしても凄いエネルギー……)そうです。
つまり、まがうかたない食のプロですけれども、日本料理に関しては、もともと深い縁があったというわけではありません。
実際、この本は、マイケルが、
「おまえに、日本料理の何がわかるっていうんだよ、えっ?」
などと、「トシ」という友人に罵られるところから始まります。
そしてマイケルは、小さな子供達を含む、一家4人で来日します。
その後、実に、約100日をかけて、文字通り、「日本を食べる」ことになるのです。
いや、凄いですよ。
日本料理をはじめ、郷土料理、今や日本の国民食であるラーメン、それも1種類どころかご当地ラーメン、ラーメン博物館、クジラの肉、などなどを味わいつくすばかりか、その素材や調味料の数々までもを、取材したおすのです。

私は日本人で、食が生きがいの1つであるという人間です。
ところがこれらの本に関しては、何度、どこを読み返しても、マイケル・ブース氏が書きだした、日本の食を軸にした膨大な情報が、私の知る限り、どれも正確であることに本当に感心します。
私は、たまに力士とすれ違いますし、ある時期になると、地元で力士が自転車に乗っていたり、力士が満載になったバスを見ることもあります。
けれど残念ながら、マイケルとその一家のように、相撲部屋に行ったこともなければ、相撲部屋の台所に入ったことも、ちゃんこ鍋をふるまわれたこともなく、ましてや有名力士に体当たりさせてもらったこともありません。
最後のことは特に、これからも永遠にないでしょう。
『英国一家、日本を食べる』には、それらの一家の経験がいきいきと詳細に描かれており、本当に面白いです。
この情報も、きっと本当というか、信憑性のあるものとしか思えません。
私の愛する祖国である日本は、多くの海外の人に言わせれば、
「極東の小国で、しかも島国」
であるそうです(何だとお!!)。
外国の人々が日本を題材にしてつくった作品は、グローバル化が進んでいる今でさえ、有名な作品も、そのほとんどが、正確性という点では、どう反応していいのか分からないくらい、本当に、ほぼすべてが間違っています。
皆さんも、実は知ってますよね?
日本が舞台になっているというだけで、正直言って、嬉しい、ワクワクする、ありがたい、とは思うんですよ。
それらの作品を見たり読んだりしていると、こんな斬新な解釈もあるのか、と感動しちゃう作品もあります。
でも、そうでないのもあるし、それが続くと、笑えるのを通り越して、情けなくなってくるんですよね。
それを見る日本人の気持ちは、実は、無視されているのかも。
抗議しない方も悪いんでしょうね。
ただ、文化の違いも大きいです。
とにかく、マイケル・ブース氏のこれらの本とその視点は、
「外国人が書いた日本もの」
というジャンルでも、そうでなくとも、正確さと正当性という点で抜きん出ているのです。
そうなんです。繰り返しますが、正確さと、正当性です。
この『英国一家、日本を食べる』のシリーズを読んでいると、かつての、
「日本に滞在した、あの方々」
のことを連想します。
誰だと思いますか?
マイケル・ブース氏と〇〇の共通点

それは、事情で昔の日本にとどまって、見聞録を残した人達です。
例えば、ルイス・フロイスですね。
戦国時代の日本で宣教し、織田信長などにも会った人です。
そういう人達が書き残したというか、残した言葉を読むと、厳密にいうとその人達の眼鏡をとおしたものなのでしょうけれど、それでも彼らが見た限りの、当時のありのままの「日本」が見えてきます。
その公平さには、目が覚める思いがします。
外国人だから、というのもありますね。
日本人には書けないことが、彼らには書けるんですよ。
マイケル・ブース氏のこの本もそうです。
食を軸にして彼らが見て、味わった、滞在当時の日本がきれいに切りとられていて、その視界は非常にクリアです。
そしてあらためて、公平です。
前述の相撲の章でも、マイケル・ブース氏は、力士とのほのぼのとした交流やちゃんこ鍋の味だけではなく、相撲界の暗部に関してもレポートしています。
その中には、私の知っていることも、知らないこともありました。
これは作品を通じていえることなのです。
例えば私はこの2冊を読んだあと、とある食材に対しての考え方が変わりました。
それがなんであるのか、どう変わったのか、私はどこにも書かないです。
私は日本人であり、このコミュニティーの中で生きていかなければなりません。
だから、私には書けないこともあるのです。
膨大な情報を、ユーモアと家族愛で味つけ
情報が正確でも、その量が大きければ大きいほど、読者は読むのが大変になる場合があります。
けれどこの作品には、それらの膨大な情報に、ユーモアという味つけがされていて、すらすら読めます。
マイケル・ブース氏の時に皮肉なユーモアや、小さな子供達の可愛さ、いつも楽しそうな奥様。
そうです。家族愛も大事な味つけの1つ。
あと、これは紀行文でもあるんですね。
その点でも動きがあって、読みやすさの一因になっています。
もともと、氏はトラベルジャーナリストでもあるそうです。
また氏の視点には、どんな時も、根底にぬくもりや素直さがあって、それが作品を軽やかなものにしています。
それと本来、異文化の食レポというのは、長ければ長いほど難しいそうです。
国や人種が違うと、味覚が違ってくる場合があるからです。
その国や地域の選ばれた人々が、心をこめて「おいしい」ものを出しても、相手の口にあわないことは、あるんですね。

例えばマイケル・ブース氏は、生のカニを食べた時、その味を、
「言葉では表せないほどデリケートだ」
と言いながら、あまり分からなかったと述べているんですが、その後、
「(前略)移動するにつれて、北海道のカニが恋しくなったのだ」
と書いていらっしゃいます。
その過程は、約2ページにわたって綿々と書かれており、読むには面白いにしても、とても引用できるものではないのですが、氏が、新しい味覚というか、食感に目覚めていく様子が分かり、これも本当に面白いです。
……あのね、読むのは面白いけど、これ、紹介するのはちょっと大変でしたよ。
私はこのシリーズを飽きることなく何度も読みかえしていますが、反対に言えば、それだけ、読みごたえのある本だということであり、ぶっちゃけちゃえば、今回、紹介させていただくにあたって、どこも面白いのにどこを紹介すればいいだろと、メモとフセンの山で本当に泣けてきましたね。

これも、ぶっちゃけましょうか。
活字離れも激しい今に、改行もほとんどない、長い、こういう本が、よく売れたなと思います。
それでもマイケルさん、またご一家は、私の知っている店や、故郷にも来てくださっていて、それを読むのも本当にありがたく楽しいことです。
それはともかく、日本の食のありのままを、欧米圏の異文化の食のエキスパートが、ここまで素直に詳細にレポートした本というのはあったでしょうか。
私はその点でも、この本は歴史に残る本、貴重な史料になると思っています。
そこまでいいますかね。でも本当にそう思っているんです。
活字にどうしても抵抗があるという方は、コミック版もありますから、ぜひ読んでみてくださいね。原作が読みたくなると思いますよ。

ちなみに写真は、『コミック版 英国一家、日本を食べるEAST』マイケル・ブース原作(亜紀書房)です。
私の不満はこれだけだ

私がこのシリーズで不満だったのは、たった1つだけです。
うどんを過小評価していることだけなんですね。
再取材していただきたいです。
私は、本当に好き嫌いがなく、海外旅行でどこに行っても困ったことはありません。
普段のうちの食事も、外国の料理が多いです。
豆味噌の味噌汁は欠かしませんけど。
けれど不思議なことに、体が弱りはてると、私は和食以外のものが食べられなくなります。
そういう時は、チキンスープも、一口も入りません。
ソバでも難しいです。おかゆもそう。
おだしのきいた、あったかい、うどんでないとダメなんです。
ソバも普段は大好きですよ。
ただ、あれはどちらかというと、もともと関東のものなんですかね。
私は名古屋市民ですが、実家は三重県です。
そして私の故郷は、方言などは、ぎりぎりで関西圏になるらしいんですね。
考えてみれば、実家のある町も、今ではおいしいソバ屋もありますが、昔からあるお店は、うどん屋が多いようです。味も関西風か中間くらい。
行きつけの、本当においしいうどん屋さんもありますよ。
縁起の悪い話なんですが、もし私が出先で何か悪いことに巻きこまれて、命からがらうちに帰ってこられた、ということがあったら、私は、お店が開いていたら、その店のうどんが食べたいです。
お店が閉まっていたら、母の味噌汁ですかね。
ちなみに私は、アニメは見たことがないんですが、前回(19話)には、原作になかった、名古屋の味噌事情(このあたりは豆味噌がソウルフードです)がとりあげられていたようで、これからアニメも観てみようと思います。
それにしても、本でこのシリーズの続きはあるのでしょうか。
人物が、読者の思い通りに動いてくれないかわりに、どうなるか分からないのがノンフィクションの醍醐味です。もし次があったら、マイケルさんご一家は、いつかあなたの街にいらっしゃるかもしれませんね。
食の話題がありましたので、名古屋でおすすめのイタリアンをどうぞ♪
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